世田谷刀剣会/北鎌倉刀剣会 ブログ

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日本刀を科学的に分析した場合 1(旧ブログより転載)

日本刀を科学的視野から研究されている方々が居られます。そう言った方の研究内容から、少しだけ利用させて頂き、「つぶやき」として書いてみます。これらは定例勉強会では学ばないであろうと思われますので。
最初のお断りとして、色んな資料からの摘出であり、私の理解が間違っていることがあるかも知れません。そのような点があれば是非ご遠慮なくご指摘なりご教示ください。

日本刀は、「折れず」「曲がらず」「良く切れる」のが特徴であると言われますが、それに「非常に錆びにくい」を追加いたします。
その四つの特徴を具現する技術は、平安の昔から科学的研究は全く無しで、経験により会得されたものです。
先 ず、材料から説明しますと、日本刀の鉄は「和鉄」と言います。自動車用鋼板などは溶鉱炉を使った鉄で西欧の技術であるために「洋鉄」と言い分けています。 和鉄は山砂鉄を使い、洋鉄は鉄鉱石を使っています。川砂鉄や海砂鉄を使わなかった理由は採取量にあり、山砂鉄が砂鉄の採取では一番効率が良いためです。次 に砂鉄と鉄鉱石の比較です。鉄鉱石は塊(かたまり)ですので。小さな粒状の砂鉄より鉄分以外の不純物を多く含みます。溶解の温度は、鉄鉱石は1500℃以 上で、コークスを使って行います。砂鉄は木炭を使いますが、1000℃前後が最高温度と言われています。溶解の目的は、不純物の無い鉄を作ることにありま す。そして空気中にありますので酸化しており、酸素を除くことが重要な要素となります。つまり酸化の反対の還元を行うことです。木炭の還元力は低温で始ま りますので、洋鉄よりも低温で還元が為されます。鉄は温度が高くなると結晶が膨らみます。「折れない」ためには結晶は小さい方が有利です。結晶が肥大する と脆くなります。
次が「折り返し鍛錬」です。加熱し槌で叩いて少し延ばし、それを折り曲げて、再度加熱し又延ばしてから折り曲げます。これを15 回前後(刀工によって回数は異なるでしょう。)繰り返します。加熱した鉄を叩けば火花が散りますが、この火花の殆どは不純物です。鍛錬することにより更に 不純物を除去します。10回折り返しますと鉄の層は1,024枚になり、15回ですと32,768枚になります。刀の重ね(厚さ)は平均的には1cm以下 です。刀の皮鉄と芯鉄とは鍛錬の回数が異なる訳ですが、単純に5mmの厚さで15回鍛錬したものと計算すれば、1枚の鉄の層は約0.15ミクロンの薄さに なります。これも折れない科学的根拠です。その次が焼き入れです。土置き(刀の表面に粘土を塗る)して加熱し一挙に水につけて冷却します。この際の加熱は 800℃を超えてはいけません。鉄の結晶密度を高く保つためです。鉄は加熱しますと726℃で結晶構造が突然変化し密度が上がります。単位体積では鉄の原 子が突然1.55倍になるためです。で、750~760℃あたりで今度は冷却し焼き入れをして、硬さを向上させます。特に刃部は平地や鎬地よりも硬くさせ ます。この工程で沸(にえ)と匂いが生まれます。匂い部の方が硬いマルテンサイトと言われる構造組織で、沸部はトルースタイトと呼ばれるマルテンサイト程 は硬くない構造組織です。又、726℃で結晶密度が一番高くなった状態から冷却されていますので、少々密度が下がり→体積が膨張→反りが発生する、ことに なります。焼き入れで硬くなりますので「折れない」性能が高まります。反りがありますので、物を切断する時に受ける反発力を、力学上から減少させるため に、同じく「折れにくい」性能を高めます。

おっと、面白みの無い内容で、皆様飽きが来たようですね。
では、良く切れる科学的理由については、皆さんで考えてください。研ぎの技術もありますが、刀の断面形状に理由があります。
回答は次回の「つぶやき」で・・・・・・。(川辺)