世田谷刀剣会/北鎌倉刀剣会 ブログ

世田谷刀剣会/北鎌倉刀剣会の公式ブログです。日本刀の美しさ、歴史、鑑定、等々の勉強会を定期的に行っております。随時会員を募集中。入会希望の方は事務局までご連絡下さい。

日本刀を科学的に分析した場合 2(旧ブログより転載)

日本刀は、「折れず」、「曲がらず」そして「良く切れる」、追加として「非常に錆びにくい」ことを科学的に分析した書籍類からの抜粋を記述しています。
初 回は、「折れない」科学的理由を中心に記載しましたが、折れないためには硬さも必要ですが脆さを少なくする必要があります。曲がらないためには硬くなけれ ばいけません。この2点は相互に矛盾する要素でもあります。どんな物質でも硬さが過ぎますとぽっきり折れる脆さが存在します。初回に説明しました、日本刀 の最大の特徴である鉄の分子密度が極めて高いことにつき、「折れない」を強調しましたが、これは「曲がらない」ための重要な要素でもあります。こんな話を 聞いたことがあります。戦いなどで曲がってしまった刀を2~3日ほって置きますと、気が付かないうちに真っ直ぐに近く戻っていたとか、曲がってしまった刀 を叩き直して真っ直ぐにしても又曲がりが発生したとか・・・・。自分自身で経験したことがありませんので真偽のほどは分かりませんが、さもありなんと言う 気がします。いずれにしましても、折れにくいことと曲がりにくいことを表現したものでしょう。
組織密度の高い鉄を何層にも鍛えて、更に焼き入れ(加熱した状態から水中で一挙に冷却)することで硬さが増します。これは曲がらない要素です。いずれ研磨し「よく切れる」武器になるための要素でもあります。
話 が前後しますが、もう一つ「折れない」要素を説明します。前段に書きました、硬い物質の脆さを補う日本刀独特の技術です。それは硬軟両方の鉄を使っている からです。刀の断面を見ますと、外側(皮鉄/カワガネと言います)と中側(芯鉄/シンガネと言います)の材質は異なります。皮鉄には鉄の純度の更に高いも のを15回とか多くの回数で折り返し鍛錬したものが使われています。芯鉄には純度が少し落ちる鉄で鍛錬回数は5回とか(正確な回数は?です)皮鉄よりも少 ない回数の折り返し数のものが使われています。それぞれに折り返し鍛錬したものを合わせて加熱しそれを延ばして刀の形にします。つまり芯鉄は相対的に軟ら かく、それを硬い皮鉄で包んであると理解して下さい。この包み方には幾つか方法がありますが、文章では説明しにくいので省略致します。日本刀は硬軟両方の 材質を合わせたものですので、折れず・曲がらずと言う両面の特性を有しています。芯鉄が皮鉄の脆さを補っているわけです。作刀工程で研磨前の最後の鍛刀工 程に焼入れがあります。表面に粘土を塗る(土置き)して加熱→冷却するものですが、土の厚さは刃部が薄く、昨年各部名称で勉強した用語で言いますと「平 地」部分が厚くしてあります。刃部は硬度が高く、平地の焼き入れ硬度を低くして、皮鉄部分でも硬軟両方の性能を持たせるためです。
次に「よく切れ る」科学的理由としては、刀は包丁と違って丸みがついていることです。刀の表面と被切断面との接触面積がより少ないことです。包丁は表面に丸みが無く単に 平たいもので、刃の部分だけが薄く尖っています。刀は「平地」に丸みが付いています。物を切断中に切断面積が少ないため摩擦が少ないわけです。ですから、 日本刀の研磨には専門家である「研師」が必要となり、研ぎが日本古来の伝統技術と言われる所以です。更に、刀には反りがついています。高校でベクトルを学 び、力の分散(分解)と集合を知りました。(私はこれが非常に苦手でした。)刀は引き切りをしないと切れません。刀の刃部を物にあてて垂直に押しても切れ ません。引きながら押し付けてやっと切れます。反りがついていることでベクトルの原理から引くに必要とされる力が減少されるわけです。

又また冗長な文章になりました。
最後は「錆にくい」ですが、これは鉄の純度が高く雑物が非常に少ないこと、組織密度が高いこと、刀の表面が研ぎで(10数工程の研磨)滑らかであることなどに理由があります。

最後まで我慢して読んで頂き感謝します。
現 代では色んな手法により科学的分析が可能であり、技術を継承することができますが、それが一切無かった時代に経験だけで積み重ねた日本刀の作刀技術が完成 されていたこと、その技術と成果である刀が千年以上に渉って受け継がれてきたことは本当に素晴らしく、日本人の誇りとなるものです。欧米では日本刀熱が盛 んなようであり、我々日本人自身がもっと認識と誇りを高めたいと思う次第です。

ご質問があれば、ブログなり勉強会で提出してください。私自身作刀の工程でまだまだ不明なところがありますが、一緒に研究したいと思っています。(川辺)

日本刀を科学的に分析した場合 1(旧ブログより転載)

日本刀を科学的視野から研究されている方々が居られます。そう言った方の研究内容から、少しだけ利用させて頂き、「つぶやき」として書いてみます。これらは定例勉強会では学ばないであろうと思われますので。
最初のお断りとして、色んな資料からの摘出であり、私の理解が間違っていることがあるかも知れません。そのような点があれば是非ご遠慮なくご指摘なりご教示ください。

日本刀は、「折れず」「曲がらず」「良く切れる」のが特徴であると言われますが、それに「非常に錆びにくい」を追加いたします。
その四つの特徴を具現する技術は、平安の昔から科学的研究は全く無しで、経験により会得されたものです。
先 ず、材料から説明しますと、日本刀の鉄は「和鉄」と言います。自動車用鋼板などは溶鉱炉を使った鉄で西欧の技術であるために「洋鉄」と言い分けています。 和鉄は山砂鉄を使い、洋鉄は鉄鉱石を使っています。川砂鉄や海砂鉄を使わなかった理由は採取量にあり、山砂鉄が砂鉄の採取では一番効率が良いためです。次 に砂鉄と鉄鉱石の比較です。鉄鉱石は塊(かたまり)ですので。小さな粒状の砂鉄より鉄分以外の不純物を多く含みます。溶解の温度は、鉄鉱石は1500℃以 上で、コークスを使って行います。砂鉄は木炭を使いますが、1000℃前後が最高温度と言われています。溶解の目的は、不純物の無い鉄を作ることにありま す。そして空気中にありますので酸化しており、酸素を除くことが重要な要素となります。つまり酸化の反対の還元を行うことです。木炭の還元力は低温で始ま りますので、洋鉄よりも低温で還元が為されます。鉄は温度が高くなると結晶が膨らみます。「折れない」ためには結晶は小さい方が有利です。結晶が肥大する と脆くなります。
次が「折り返し鍛錬」です。加熱し槌で叩いて少し延ばし、それを折り曲げて、再度加熱し又延ばしてから折り曲げます。これを15 回前後(刀工によって回数は異なるでしょう。)繰り返します。加熱した鉄を叩けば火花が散りますが、この火花の殆どは不純物です。鍛錬することにより更に 不純物を除去します。10回折り返しますと鉄の層は1,024枚になり、15回ですと32,768枚になります。刀の重ね(厚さ)は平均的には1cm以下 です。刀の皮鉄と芯鉄とは鍛錬の回数が異なる訳ですが、単純に5mmの厚さで15回鍛錬したものと計算すれば、1枚の鉄の層は約0.15ミクロンの薄さに なります。これも折れない科学的根拠です。その次が焼き入れです。土置き(刀の表面に粘土を塗る)して加熱し一挙に水につけて冷却します。この際の加熱は 800℃を超えてはいけません。鉄の結晶密度を高く保つためです。鉄は加熱しますと726℃で結晶構造が突然変化し密度が上がります。単位体積では鉄の原 子が突然1.55倍になるためです。で、750~760℃あたりで今度は冷却し焼き入れをして、硬さを向上させます。特に刃部は平地や鎬地よりも硬くさせ ます。この工程で沸(にえ)と匂いが生まれます。匂い部の方が硬いマルテンサイトと言われる構造組織で、沸部はトルースタイトと呼ばれるマルテンサイト程 は硬くない構造組織です。又、726℃で結晶密度が一番高くなった状態から冷却されていますので、少々密度が下がり→体積が膨張→反りが発生する、ことに なります。焼き入れで硬くなりますので「折れない」性能が高まります。反りがありますので、物を切断する時に受ける反発力を、力学上から減少させるため に、同じく「折れにくい」性能を高めます。

おっと、面白みの無い内容で、皆様飽きが来たようですね。
では、良く切れる科学的理由については、皆さんで考えてください。研ぎの技術もありますが、刀の断面形状に理由があります。
回答は次回の「つぶやき」で・・・・・・。(川辺)

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